Bun買収をAnthropicが発表!Claude Code半年で1000億円突破【完全解説】
2025年11月、AIコーディングツール界に激震が走りました。AnthropicがBun買収を正式発表。Claude(クロード)を開発するAnthropicが、JavaScriptランタイム「Bun」を傘下に収めました。
この記事では、バイブコーディングを実践する開発者にとって、この買収が何を意味するのかを徹底解説します。
この記事でわかること
- AnthropicがBun買収した理由と背景
- Claude Codeの驚異的な成長の実態
- Bunとは何か:技術的特徴と歴史
- Node.jsとの違いとパフォーマンス比較
- バイブコーディングへの影響と今後の展望
目次
AnthropicがBun買収:何が起きたのか
発表の概要
2025年11月、Anthropicは公式ブログで「Claude Codeが10億ドルのランレートに到達」と「Bunの買収」を同時に発表しました。
Bunは2021年にJarred Sumnerによって開発が始まったJavaScriptランタイムです。
Node.jsの代替として設計され、ランタイム・パッケージマネージャー・バンドラー・テストランナーをオールインワンで提供。その圧倒的な速度から、多くの開発者に支持されてきました。
なぜ今、この買収なのか
実は、AnthropicとBunの協力関係は数ヶ月前から始まっていました。
Claude Codeチームの迅速な開発を支えてきたのがBunであり、Claude Codeのネイティブインストーラーのリリースにも直接貢献していました。
Mike Krieger(Anthropic CPO)は次のようにコメントしています。
「Bunはまさに私たちがAnthropicに取り込みたい技術的卓越性を体現している。Jarredとチームは実際のユースケースに焦点を当てながら、JavaScriptツールチェーン全体を最初の原理から再考した」
Claude Codeの驚異的な成長
6ヶ月で10億ドル:AIコーディングツール史上最速
Claude Codeは2025年5月に一般公開され、わずか6ヶ月で10億ドル(約1,500億円)のランレートに到達しました。これはAIコーディングツール史上、前例のない成長速度です。
採用企業には、Netflix、Spotify、KPMG、L’Oreal、Salesforceなど、世界的なエンタープライズ企業が名を連ねています。
なぜClaude Codeはここまで成長したのか
Claude Codeの急成長の背景には、以下の要因があります。
- Claude 4.5シリーズの圧倒的な性能 – コーディング能力で業界最高水準
- エージェント型コーディングの実現 – 単なる補完ではなく、自律的なタスク実行
- Bunによる高速な実行環境 – シングルファイル実行ファイルで簡単配布
特に3つ目のBunの存在は重要です。Claude CodeはBunの実行ファイルとして数百万ユーザーに配布されており、「Bunが壊れればClaude Codeが壊れる」という関係にあります。
Bunとは何か:JavaScriptの常識を覆すランタイム
Bunの基本情報
Bunは、Node.jsやDenoと同じカテゴリに属するJavaScriptランタイムです。しかし、単なるランタイムではありません。
| 機能 | Bun | Node.js |
| ランタイム | 内臓 | 内臓 |
| パッケージマネージャー | 内臓(npm互換) | npm別途必要 |
| バンドラー | 内臓 | Webpackなどが必要 |
| トランスパイラ | 内蔵(TS/JSX対応) | Babel等が必要 |
| テストランナー | 内蔵(Jest互換) | Jest等が必要 |
| 環境変数ローダー | 内蔵 | dotenv等が必要 |
つまり、Bunはオールインワンツールキットとして設計されており、従来Node.jsで必要だった複数のツール(npm、Webpack、Babel、Jest、dotenvなど)を1つのバイナリに統合しています。
Bunの誕生ストーリー
Bunの開発は、創業者Jarred Sumnerの個人的なフラストレーションから始まりました。
約5年前(2021年頃)、彼はMinecraft風のブラウザゲームを開発していました。コードベースが大きくなるにつれ、Next.jsのホットリロードに45秒もかかるようになったのです。
この問題を解決しようとした結果、esbuildのJSX/TypeScriptトランスパイラをGoからZigに移植。これがBunの原型となりました。
2021年5月、Jarredは初期のベンチマーク結果を当時のTwitter(現: X)に投稿しました。
- esbuildより3倍高速
- swcより94倍高速
- Babelより197倍高速
この驚異的な数字が注目を集め、Bunプロジェクトが本格的に始動しました。
Bunの技術的特徴:なぜこれほど速いのか
JavaScriptCoreエンジンの採用
Node.jsやDenoがGoogle Chrome由来のV8エンジンを使用しているのに対し、BunはJavaScriptCore(JSC)を採用しています。
JavaScriptCoreは、AppleがSafariブラウザ用に開発したJavaScriptエンジンです。V8と比較して、特に起動時間が約4倍高速という特徴があります。
これは、AIコーディングツールのようにCLIを頻繁に起動するユースケースで大きなアドバンテージとなります。
Zig言語による実装
BunのコアはZigというシステムプログラミング言語で書かれています。
Zigの特徴は以下の通りです。
- 低レベルなメモリ制御 – C言語に匹敵する細かい制御が可能
- 隠れた制御フローがない – 予測可能な実行パス
- コンパイル時の最適化 – 高速なネイティブコードを生成
これにより、V8+C++で構築されたNode.jsよりも効率的なメモリ管理と高速な実行が可能になっています。
シングルファイル実行ファイル
Bunの大きな特徴の1つが、シングルファイル実行ファイル(Single-file Executables)です。
# JavaScriptプロジェクトを自己完結型バイナリにコンパイル
bun build --compile ./index.ts --outfile myapp
このコマンドで生成されたバイナリは、ユーザーがBunやNode.jsをインストールしていなくても実行可能です。ネイティブアドオンにも対応しています。
Claude Code、FactoryAI、OpenCodeなどのAIコーディングツールが、この機能を使ってCLIを配布しています。
Bunのパフォーマンス:Node.jsとの比較
ベンチマーク結果
複数のベンチマークテストによると、Bunは以下のようなパフォーマンスを示しています。
| 項目 | Bunの優位性 |
|---|---|
| HTTPサーバー | Node.jsの2.5〜3倍高速 |
| ファイル読み込み | Node.jsの10倍高速 |
| ファイル書き込み | Node.jsの3倍高速 |
| パッケージインストール | npmの29倍、pnpmの17倍高速 |
| 起動時間 | Node.jsの4倍高速 |
| WebSocket | Node.jsの6倍以上高速 |
Expressフレームワークでの実測
Bun 1.2のリリースでは、Expressフレームワークを使用したHTTPリクエスト処理がNode.jsの3倍高速になったことが報告されています。
これは、node:httpとの互換性改善とBunのHTTPサーバー最適化によるものです。
なぜここまで速いのか
Bunの高速性の理由をまとめると以下の通りです。
- JavaScriptCoreの高速起動 – V8より起動が約4倍速い
- Zigによる最適化 – 低レベルなメモリ制御と隠れた制御フローの排除
- オールインワン設計 – ツール間の連携オーバーヘッドがない
- ネイティブ実装 – 多くの機能がZigでネイティブ実装されている
Bunのバージョン履歴と進化
v0.1.0(2022年7月):パブリックベータ
Bunの最初の公開リリースです。バンドラー、トランスパイラ、ランタイム(Node.js互換を目指す)、テストランナー、パッケージマネージャーをオールインワンで提供。
最初の1週間でGitHub 20,000スターを獲得する大反響となりました。
この時点でKleiner Perkinsから700万ドルのシード資金を調達し、Oven社として本格的な開発体制を整えました。
v1.0.0(2023年9月):安定版リリース
約1年の開発を経て、Bunは初の安定版をリリース。本番環境での使用が可能になりました。
この時期にKhosla Venturesから1,900万ドルのシリーズAを調達し、チームは14人に拡大しました。
v1.1.0(2024年4月):Windowsサポート(Bundows)
待望のWindowsネイティブサポートが追加されました。「Bundows」の愛称で呼ばれるこのリリースにより、Windows上でもBunのランタイム、テストランナー、パッケージマネージャー、バンドラーがすべて動作するようになりました。
主な改善点は以下の通りです。
- Vite Reactアプリのインストールがyarn/pnpmの18倍、npmの30倍高速
bun runがnpm runの11倍高速- クロスプラットフォームシェル(bash互換)の実装
v1.2.0(2025年1月):クラウドネイティブ対応
PostgreSQLクライアント(Bun.sql)とS3クライアント(Bun.s3)が内蔵されました。
主な特徴は以下の通りです。
- PostgreSQLクライアントがNode.jsのライブラリより50%高速
- S3クライアントがAWS SDKより5倍高速
- Node.jsテストスイートの90%以上に合格
- テキストベースのロックファイル(bun.lock)の導入
v1.3.0(2025年10月):統合SQLとRedisサポート
ゼロコンフィグのフロントエンド開発サーバー、統合SQL API(PostgreSQL、MySQL、SQLiteを統一インターフェースで操作)、Redisクライアントが追加されました。
主な新機能は以下の通りです。
Bun.SQLでMySQL/MariaDB、SQLite、PostgreSQLを統一的に操作- ネイティブYAMLサポート
- 非同期スタックトレース
- セキュリティ強化
- pnpm-lock.yamlからの移行サポート
Bunの主要機能詳細
1. パッケージマネージャー(bun install)
npm、yarn、pnpmと互換性があり、package.jsonとnode_modulesをそのまま使用できます。
# パッケージのインストール(npmの29倍高速)
bun install
# パッケージの追加
bun add express
# 開発依存として追加
bun add -d typescript
特徴的な機能として以下があります。
- グローバルディスクキャッシュ – 一度ダウンロードしたパッケージを再利用
- 並列インストール – 複数パッケージを同時にダウンロード・展開
- ワークスペースサポート – モノレポ対応
- pnpm-lock.yaml移行 – pnpmからの乗り換えをサポート
2. ランタイム
Node.jsのドロップイン代替として設計されており、多くのNode.jsアプリケーションがそのまま動作します。
# TypeScript/JSXを直接実行(トランスパイル不要)
bun run index.tsx
# ウォッチモード
bun --watch run index.ts
特徴的な機能として以下があります。
- TypeScript/JSXネイティブサポート – 設定不要で直接実行
- Web標準API – fetch、WebSocket、ReadableStreamなどを内蔵
- Node.js互換 – process、Buffer、fs、httpなど主要APIをサポート
- 環境変数の自動読み込み –
.envファイルを自動検出
3. バンドラー(bun build)
Webpack、Rollup、esbuildの代替として使用できます。
# バンドル
bun build ./src/index.ts --outdir ./dist
# シングルファイル実行ファイルの作成
bun build --compile ./src/index.ts --outfile myapp
# クロスプラットフォームコンパイル
bun build --compile --target=linux-x64 ./src/index.ts
特徴的な機能として以下があります。
- 1秒間に100万行以上のJavaScriptをバンドル可能
- ツリーシェイキング – 未使用コードの自動削除
- HTMLインポート – HTMLファイルをエントリーポイントとして使用可能
- CSSバンドル – CSSの最適化と結合
テストランナー(bun:test)
Jest互換のテストランナーが内蔵されています。
import { test, expect } from "bun:test";
test("2 + 2 = 4", () => {
expect(2 + 2).toBe(4);
});
特徴的な機能として以下があります。
- Jest互換API – describe、it、expect、mockなど
- スナップショットテスト – インラインスナップショット対応
- ウォッチモード – ファイル変更時に自動再実行
- 並列実行 – 複数テストの同時実行
- リトライ機能 – フレイキーテスト対策
5. 組み込みデータベースクライアント
外部ライブラリなしでデータベースに接続できます。
import { SQL } from "bun";
// PostgreSQL
const pg = new SQL("postgres://user:pass@localhost/db");
const users = await pg`SELECT * FROM users`;
// MySQL
const mysql = new SQL("mysql://user:pass@localhost/db");
// SQLite
import { Database } from "bun:sqlite";
const db = new Database("mydb.sqlite");
6. S3クライアント
クラウドストレージへの直接アクセスが可能です。
import { s3 } from "bun";
// ファイルの書き込み
await s3.file("folder/file.txt").write("hello s3!");
// ファイルの読み込み
const content = await s3.file("folder/file.txt").text();
// 署名付きURLの生成
const url = s3.file("folder/file.txt").presign();
Amazon S3、Google Cloud Storage、Cloudflare R2など、S3互換ストレージに対応しています。
Bunの採用企業・プロジェクト
Bunは多くの有名企業・プロジェクトで採用されています。
| 企業/プロジェクト | 用途 |
|---|---|
| Midjourney | WebSocketサーバーで画像生成通知を配信 |
| Lovable | 開発速度と生産性の向上 |
| Tailwind CSS | スタンドアロンCLIをBunで構築 |
| Claude Code | CLIツールの配布 |
| FactoryAI | AIコーディングツール |
| OpenCode | AIコーディングツール |
| X(旧Twitter) | 本番環境で使用 |
月間ダウンロード数は700万以上(2025年10月は前月比25%成長)、GitHubスターは82,000以上に達しています。
買収の背景:なぜBunはAnthropicを選んだのか
収益ゼロでも4年分の運転資金があった
Bun側の発表によると、買収時点での収益はゼロ。
しかし、Kleiner Perkinsから700万ドルのシード、Khosla Venturesから1,900万ドルのシリーズAを調達しており、合計2,600万ドル(約40億円)の資金を持ち、4年以上の運転資金がありました。
つまり、Bunは財政的に追い詰められて買収されたわけではないのです。
「ソフトウェア開発は2〜3年後どうなるのか」
Jarred Sumnerは買収の理由をこう説明しています。
AIコーディングツールが急速に進化する中、「VCバックのスタートアップがマネタイズを模索する」というフェーズをスキップし、最高のJavaScriptツールの開発に集中できる道を選んだのです。
彼は次のように予測しています。
「もし新しいコードの大部分がAIエージェントによって書かれ、テストされ、デプロイされるなら、そのコード周辺のランタイムとツールはさらに重要になる。人間は個々のコード行から離れていくので、実行環境は高速で予測可能でなければならない」
4時間の散歩が決め手に
興味深いエピソードがあります。Jarredは Claude CodeチームのBorisと4時間の散歩を何度も行い、Bunの未来、AIコーディングの行方、Anthropicへの参加について議論しました。
競合他社とも同様の議論を行った結果、「Anthropicが勝つ」と判断したそうです。
バイブコーディングへの影響:何が変わるのか
変わらないこと
Bunユーザー、そしてバイブコーダーにとって安心できる点があります。
- オープンソース・MITライセンスを維持
- 同じチームが引き続き開発
- GitHubでの公開開発を継続
- Node.js互換性・置き換えへのフォーカスを継続
変わること
一方で、以下の点は変化します。
- Claude Code・Claude Agent SDKの高速化・軽量化
- AIコーディングツールの未来を先取りした改善
- 開発速度の向上(Anthropicのリソースを活用)
BunリポジトリのトップコントリビューターはClaude Code
驚くべき事実があります。現在、BunのGitHubリポジトリで最も多くのPRをマージしているのは、Claude Codeボットです。
Bunチームは社内Discordでclaude Codeを活用し、バグ修正のPR作成、テスト作成、レビューコメントへの対応まで自動化しています。
これは「AIがAIのインフラを改善する」という、新しい開発パラダイムの象徴と言えるでしょう。
今後の展望:AIコーディングの未来
ブラウザエンジンとの類似性
Jarred Sumnerは、今後のBunとAnthropicの関係を以下のように例えています。
- Google Chrome と V8
- Safari と JavaScriptCore
- Firefox と SpiderMonkey
ただし、これらよりも独立性が高いとのこと。Bunは引き続き汎用JavaScriptランタイムとして発展しつつ、AIコーディングツールのインフラとしても最適化されていきます。
エージェント時代のインフラ層
AIコーディングツールが「クールなデモ」から「実際に使えるツール」に進化した今、インフラ層の重要性は増す一方です。
従来のJavaScriptランタイムは、人間のペースに合わせた開発ワークフロー向けに最適化されていました。しかし、AIエージェントはマシン速度で動作し、より高速な起動時間と低いリソース消費を必要とします。
Bunの高速性・予測可能性・シングルファイル配布は、まさにこの未来に最適化された特性と言えます。
まとめ:バイブコーダーが知っておくべきポイント
AnthropicによるBun買収は、AIコーディングツール業界の大きな転換点です。
押さえておくべきポイント
- Claude Codeは6ヶ月で10億ドル規模に成長 – AIコーディングツール市場の急拡大を象徴
- BunはClaude Codeのインフラ – 「Bunが壊れればClaude Codeが壊れる」関係
- Bunはオープンソースを維持 – 安心して使い続けられる
- AIがAIのインフラを改善する時代 – Claude CodeがBunのトップコントリビューター
- Node.jsの4倍高速な起動 – AIエージェント時代に最適化された性能
- オールインワンツールキット – npm、Webpack、Babel、Jestを1つに統合
バイブコーディングを実践する開発者にとって、この買収は追い風です。Claude Codeの性能向上、Bunの開発加速、そしてAIコーディングツール全体のエコシステム強化が期待できます。
今後もClaude CodeとBunの動向から目が離せません。
